残党ログ

TCGの雑記です

バンドリSS 薫千聖

「ふふっ。薫にこういうお店に誘われるなんてね」

周囲を軽く見ながら視線を正面に戻す千聖

「あ、ははは。たまには千聖と二人っきりもいいんじゃないかと思ってね」

少し視線を泳がせてしまう薫

「あら、他にもお客さんはいるわよ」

そんな薫を少しいじめたくなる千聖

「おやおや、何を言っているんだい。僕は君しか見てないよ」

そう言って必死に普段の自分に戻ろうとする薫

「お上手ね。でも今日のあなた、少し変よ?こんなお店に誘ってくれたのも含めて」

店内は照明がやや薄暗く、雰囲気のある店と言えばよいだろうか。そんな店に二人は向かい合って座っていた。

「それはつまり…そう言うことさ」

さわやかに薫が言い放つ

「はぁ。つまりはあんまり考えてないと」

ため息交じりに千聖は視線を落とす

「そんなことはないさ。今は、千聖、君の事で頭がいっぱいなんだから」

やや走った口調で取り繕う薫

「よくわからないけど、今日の薫が少し変なのはわかるわ」

そう言ってお冷を呑む千聖

「そ、そうかい?いつも通りおつもりなんだが、僕としたことが少し緊張してしまってるようだ」

そう言うと一旦千聖から目をそらす

「珍しいわね。あなたが私に緊張してるだなんて」

あー、そうですか。とでも言いたげな千聖

「らしくもないことはするもんじゃかったかな…」

そう言うと視線を落とす薫

がさがさと自分の脇に置いた荷物へ手を伸ばす

きょとんとする千聖だったが、

「今日は君にこれを渡したくてね。今日は君が子役としてデビューした日、いわゆる記念日さ」

いつになくさわやかに紙袋をテーブルの真ん中に置いた薫

「…」

目を軽く見開いたまま硬直してしまった千聖

「お、おや?も、もしかして気に入らなかったのかい?」

汗ばんだ表情で尋ねる薫

「そんなことない。そんなことないわよ…」

急にうつむき声を殺す千聖

「じゃ、じゃあどうしたんだい?」

混乱し始める薫

「あなたが…、薫が…」

今にも泣きだしそうな千聖

「え?え?ボ、僕が?」

パニック寸前の薫

「私の事ちゃんと覚えてるなんて思わなかったから。ぐすん」

半泣きで今にも大泣きしそうな千聖

「僕は千聖の事わすれたことなんてないさ。寧ろ、君の事を祝おうとしたらいつも君には予定が入っていて…僕が忘れられたんじゃないかっていつも不安だったよ」

胸の内を明かす薫

「…ばか」

小さくそう言うと千聖は立ち上がり、

「お化粧直してくるわね」

と言うと満面の笑みを薫に向けるとその場を後にした

 

~10分後~

 

「ごめんなさい、少し混んでいて」

戻ってきた千聖は何食わぬ顔で席へ着く

「ではその袋を早速開けてみてくれるかい?気に入ってくれればいいんだが」

自信満々に促す薫

そう言われて袋を開けた千聖

「服?でもサイズはどうなってるのかしら」

悪戯っぽく言う千聖

「心配には及ばないさ。君の母上に聞いてきたからね」

またまた自信満々な薫

「なら大丈夫そうね。ところで薫は明日予定ある?」

服を手に取りながらそう尋ねる千聖

「明日?もちろん空いているけどどうかしたのかい?」

面食らったような顔をする薫

「明日、この服着て出かけたいからエスコートをお願いしようと思ったのだけれど、ダメだったかしら?」

上目使いで薫を見やる千聖

「そう言うことならOKさ。明日、君の家に迎えに行くよ」

 

~END~